転職というのは、「何かを得るため」にするものです。
けれど実際には、「何かを失う覚悟」がないと、うまくはいかない。
私はこれまで何度か転職を経験してきましたが、振り返ってみると、確実に得られるものは一つしかありません。
それは、「自分の意思で、自分の足で、自分の人生を歩んでいる」という感覚です。いくつかあげますが、正直転職してみないと分からない、というのが現実です。
■ 得られるもの① 主体的にキャリアを選ぶという意識
大企業にいると、多くの場合は会社の意向によって人事異動が決まります。
もちろん、社内公募やキャリア制度がある会社も増えていますが、
それでも「自分で決めた」「自分で選んだ」という実感は、意外なほど少ないものです。
一方、転職を経験すると、その意識がガラッと変わります。
「会社に決められたキャリア」から、「自分で選び取るキャリア」へ。
一度この感覚を覚えると、もう元には戻れません。
以後の人生では、“受け身のキャリア”ではなく、自分の意思で動くことが当たり前になるのです。
それは小さな一歩のようでいて、人生全体の舵を取り戻す大きな変化でもあります。
■ 得られるもの② うまくいけば、高いモチベーションと充実した生活
自分で選んだ環境、自分で選んだ仕事。
そこには「納得感」があります。
納得感は、仕事に対するモチベーションを支える一番の原動力です。
うまくいけば、毎朝の通勤電車の中でも、どこか前向きな気持ちでいられる。
「やらされている」から「やりたい」へ。
その違いは日々の幸福度を大きく変えます。
■ 得られるもの③ うまくいけば、より高い収入
転職市場で評価されるスキルや経験を持っている人なら、
収入アップの可能性も十分あります。
実力主義の環境に身を置けば、自分の頑張りがダイレクトに反映されることもある。
ただし、これはあくまで「うまくいけば」の話。
条件の良い転職には、準備と戦略が欠かせません。
■ 得られるもの④ 人間関係の改善(うまくいけば)
仕事のストレスの大部分は「人間関係」と言われます。
職場の人間関係が変わるだけで、驚くほど気持ちが軽くなることもある。
転職先で、自分と価値観の近い人たちに囲まれるようになれば、
日々のストレスは激減し、仕事の成果も自然と上がります。
■ 得られるもの⑤ ワークライフバランスの再設計(うまくいけば)
転職を機に、働き方を見直す人も多いです。
リモートワーク制度のある企業や、裁量労働が可能な職場を選べば、
「自分の時間を自分でコントロールする」生活が手に入るかもしれません。
大企業で与えられていた“安定”とはまた違う、
“自由と責任のバランス”を肌で感じることになるでしょう。
一方で、失うもの
得られるものがあれば、当然、失うものもあります。
それは得られるものの「裏返し」でもあります。
■ 失うもの① 会社による“安全な異動”という制度的な優しさ
大企業では、合わない部署でも「異動すればリセットできる」という安全網があります。
転職すると、それがなくなります。
次のステージで合わなければ、自分で動くしかない。
すべての選択と結果が、最終的に自分の責任になります。
■ 失うもの② モチベーションが続かないリスク
思っていた仕事と違った、
上司が合わない、
カルチャーが自分にフィットしない──
転職には「理想と現実のギャップ」がつきものです。
最初の高揚感が薄れると、「あれ、自分は何を求めていたんだっけ?」と迷う瞬間もある。
それを受け止める覚悟が必要です。
■ 失うもの③ 長期的な報酬・退職金の積み上げ
大企業の給与体系は、年功序列的な構造を前提に設計されています。
長くいればいるほど、昇給・賞与・退職金・企業年金──すべてに「積み上げ効果」が働く。
一度辞めれば、それらはゼロに戻ります。
転職先で再び積み上げるには、時間と運が必要です。
■ 失うもの④ より悪化する人間関係の可能性
環境が変われば人間関係も変わります。
しかし、それが必ずしも良くなるとは限らない。
むしろ、組織規模が小さいほど人間関係の距離が近く、
かえって気を遣う場面が増えることもあります。
■ 失うもの⑤ よりハードな労働環境
転職して初めて、大企業の「制度的な安心感」に気づく人も多いです。
労働時間、休暇制度、福利厚生、残業代の管理、教育制度──
当たり前と思っていたものが、実は相当手厚かったことに気づく瞬間があります。
そして、確実に得られるものは──
転職をしても、すべてが良い方向に転ぶとは限りません。
むしろ、思い描いた通りにいかないことのほうが多い。
それでも確実に得られるのは、
「自分の意思で、自分の足で、自分の人生を歩んでいる」という感覚です。
この感覚を一度持つと、
どんなに厳しい状況でも、どこかで自分を支えてくれます。
「他人の人生を生きていない」という確信。
それこそが、転職という選択の本当の意味かもしれません。
最後に
確実に得られるのは、主体性と自己決定の感覚だけ。
それでも、あなたは転職しますか?自分に問いかけてみましょう。
僕もそうですが、主体性と自己決定を重要視する人は、「うまくいかなかったなぁ」
と思うことはあっても、後悔はしないと思います。

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